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知識のいずみ

 

疾病・怪我を予防する(1)椎間板ヘルニアについて

稽古でおこる疾病・怪我に対しては予防をしなければなりませんし、また起きてしまった場合には正しい処置が必要になります。 このページでは、椎間板ヘルニアについてご紹介します。

・脊柱と椎間板の構造、役割

脊椎とは脊椎骨(頸椎、胸椎、腰椎、仙椎および尾椎)からできており、さらに椎間板および靱帯が脊椎骨と連続することにより脊柱を形成しています。
 
脊柱の内部はトンネル構造となっており、この中に脳から連続した脊髄が存在します。また脊髄からはそれぞれ椎骨に対応し左右一対ずつの神経根があります。
上肢あるいは下肢の運動感覚機能はそれぞれ頸髄(頚部の脊髄)の神経根、腰髄(腰部の脊髄)の神経根が関与しています。
 
椎間板は頸椎から仙椎までの椎体を連結し、脊椎の安定性を維持し支持組織としての役割を持っています。また、椎間板は荷重や衝撃の吸収、緩衝といったクッションの機能もしています。
椎間板は髄核と線維輪からなっていて、髄核は水分の豊富なゲル状の組織で軟骨細胞・膠原線維・水分の豊富なムコ多糖蛋白複合体(プロテオグリカン)からなります。
線維輪は髄核を包み込むように存在し、脊椎骨を強固に連結しています。膠原線維を含む線維軟骨が主成分で弾性に富む丈夫な組織です。

・椎間板ヘルニアとは

椎間板ヘルニアの80%以上は腰に発生します。最も多いのは30~50歳の人ですが、この年代の人は椎間板を覆う膜が弱くなっているので、 強く圧迫されると線維輪が断裂した個所や膜のもろい個所から髄核が出たり、線維輪の一部が後方ないし後側方へ押し出されてこぶ状になります。
この状態を椎間板ヘルニアといいます。
椎間板ヘルニアがおこると、その部位に局所的な疼痛が起こります。またこの椎間板ヘルニアが周辺の神経を圧迫したり、炎症をおこすと、 障害部位の神経症状がおきる場合があります。障害される神経が脊髄の場合は脊髄症、神経根の場合は神経根症といいます。
 
50歳を過ぎると、椎間板の中身は硬くなりはじめるため、ヘルニアは起こりにくくなります。
椎間板は、事故による外傷や、軽いけがを繰り返していると、突然ヘルニアを起こします。太っていたり、重いものを特に変な姿勢で持ち上げると、 ヘルニアが起こりやすくなります。
 
多くの人は特に治療をしなくても、約2週間で回復します。患部を冷やしたり(アイスパックなど)、 温めたり(温湿布など)、市販の鎮痛薬を使用すると痛みが和らぎます。
 

  頚椎 腰椎
年代 40-50歳代に多い 30-50歳代の男性に多い
箇所 動きの大きい第4頸椎から第6頸椎間の
中下位椎間板に多い
第4/5腰椎間、第5腰椎/仙椎間に多い
症状 頚部痛、背部痛、肩こりなど脊柱周囲の症状を伴うことがあり、 また、頚部運動時、特に後屈時に電撃痛を感じる場合もあります。
神経圧迫を生じると脊髄症あるいは神経根症状などの症状が出てきます。
 
頚部で脊髄が障害された場合は、手足のしびれや脱力などの運動障害を自覚することが多く、 重症例では排尿や排便の障害も伴います。
神経根障害では、頚部痛や肩甲骨周囲あるいは上肢の局所的な痛みを伴うことが多く、 腕が上がらないなどの局所的な上肢の運動障害を伴う場合もあります。
症状は激しい腰痛を伴うことが多いのですが、 数日前より腰部の違和感など前駆症状を呈することもあります。
 
下部腰痛椎間板ヘルニアでは臀部から大腿背面に沿って下腿に向かう痛み、すなわち坐骨神経痛を生じます。
外側型や遠外側型では圧迫された神経根の症状、つまり下肢の限局的な感覚障害や運動障害などの症状が出てきます。
 
排尿や排便の障害あるいは両下肢全体の運動感覚障害を起こすことは少ないのですが、巨大なヘルニアでは生じる可能性があります。
治療 痛みしかない場合や神経症状が脊髄ではなく神経根の障害による場合、また脊髄症を呈していても症状が軽い場合は手術ではなく、 保存的治療が優先されます。
 
保存的治療は頚椎安静、固定、牽引、薬物療法、神経ブロックなどがあり、重症例であっても安静を保つことで神経症状が緩解する場合もあります。
脊髄症で神経症状が進行する場合や、筋肉がやせ細ってしまった場合は手術が必要となります。
 
手術方法は頚椎前方より手術用顕微鏡を用いて椎間板や骨棘(神経を圧迫している骨のでっぱり)を摘出する方法と、 後方から脊椎の一部で弓状に神経組織をおおっている椎弓を摘出(椎弓切除術)または形成して(椎弓形成)、 脊椎管を拡大し脊髄や神経根の圧迫をとる方法があります。
 
病変が局所的な場合や頚椎が不安定な場合は、前方からの手術が多く、病変が多椎間にわたる場合、 全体に脊椎管が狭い場合には後方除圧となる場合があります。
局所安静や消炎鎮痛剤、筋弛緩薬などの内服薬、急性期以降の牽引、コルセット固定などの保存的治療が優先されます。
 
脱出した髄核は数ヶ月で吸収されることが多いからです。保存的加療でも症状が改善せず、疼痛が強い場合や神経症状が顕著な場合は手術となる場合があります。
 
排尿や排便障害があるような重度のヘルニアでは手術が必要となります。
手術は後方から一部椎弓を切除し、神経を圧迫しているヘルニア塊を摘出する(ラブ法)方法が一般的です。
内視鏡による椎間板ヘルニア摘出やレーザーによる経皮的蒸散療法なども行われるようになってきています。

参考資料:
(社)日本脳神経外科学会 脳神経外科疾患情報
メルクマニュアル医学百科 最新家庭版

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